― 書を通して、感性がひらく時間 ―

小学1年生からお習字を続けてきた高校生の生徒さんが、受験の臨戦態勢に入るため教室を卒業することになりました。その節目に、「これまでお世話になったご両親へ集大成となる作品をサプライズで贈りたい」と相談してくれました。
ご両親はいつもにこやかに送り迎えをし、筆のお手入れまで気にかけてくださる方々。お子様たちの活動を、静かに、けれど力強く支えてこられました。
題材は、思い出と重なる “歌”
まずは、お家の中で飾る場所を決め、そのスペースに合わせて紙のサイズを決めました。選んだのは半切(縦136 cm×横35 cm)です。
作品の題材に選んだのは、ご両親が大好きなジブリ作品の挿入歌。その歌詞の中から、とっておきの一節を選び、書作品として表現することにしました。
「誰に、何を、どう届けたいか」
ここを丁寧に共有するところから、制作は始まります。
構図づくりからスタート
まずは大きなホワイトボードを使い、書いては消し、また書いて…を繰り返しながら、複数の構図を考えてもらいました。こちらからも「こういう見せ方はどう?」とアイデアを挟みつつ、生徒自身の感性を引き出していきます。
構図がある程度固まったところで、スマートフォンの画像加工アプリを使って微調整。そして、いよいよ筆をとりました。
「上手」だけでは、何かもの足りない
最初は、漢字作品のように大きく堂々と書いてみました。
けれど、書き終えた本人がぽつりと一言。
「……これじゃない気がする」
文字の大きさ、字間、形を何度も見直しましたが、どうにも決め手に欠けます。
きれいだけれど、面白くない。
想いはあるのに、まだ届いていない。そんな感触でした。
歌なのだから、リズムで書いてみよう
そのとき、ふとひらめいたのが、
「これは音楽なんだから、歌のリズムで書いたらどうだろう?」
音楽に素養のない私に代わり、学生時代、吹奏楽に親しんできた当社の代表が、歌のテンポを整理し、簡単な“リズム譜”を起こしてくれました。

そのリズムをもとに書いた草稿がこちらです。

文字の大小や配置に自然な揺らぎが生まれ、
歌っているような、流れていくような構成になりました。
「なんだか、楽しくなってきました!」
そう言って筆を運ぶ生徒さんの生き生きとした姿が、とても印象的でした。
当教室が大切にしていること
当教室では、文字を整えることだけを目的にしていません。
想いをどう受け取り、どう構成し、どう形にするか。
その過程で“考えること”を、作品づくりの中心に据えています。
卒業制作は、技術の集大成であると同時に、その人らしさが最もよく表れる時間でもあります。
この一枚が、ご両親にとっても、生徒さん自身にとっても、長く心に残る作品になることを願っています。
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