教室エピソード:どっちの「野」がかっこいい?

書道

子どもたちの感性が教えてくれた“美しい字”のかたち

教室のホワイトボードに、ふたつの「野」を書きました。
字形の学習の一環として、「どちらの『野』がかっこいいと思う?」とみんなに聞いてみたのです。

右側は習字のお手本の字形です。
当然、みんな右を選ぶだろうと思い、「では、右のように書くにはどうすればいいか」という流れを想定していました。
ところが、予想に反して多くの子どもたちが左に手を挙げたのです。

どうやら、活字に慣れた世代には左の方が「きれいな字」に見えるようです。
さらに驚いたのは、習字を始めて3年以上の子までが左を選んだこと。
確かにその子の字は整っていて上手なのですが、どこか“習字の字”になりきれません。
その理由が、少し見えた気がしました。

理想とする字の形を、どう共有し、どう育てていくか。
お手本に目が慣れ、指導で手が慣れて――その繰り返しの中で自然に培われていくものだと思っていましたが、
実際にはもっと深く、繊細な過程なのだと気づかされた出来事でした。

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